どこからどう見てもカニにしか見えないこのタラバガニ、生物の分類ではヤドカリの仲間なのだとか。ズワイガニなどカニの仲間は「はさみ脚」1対と「歩脚(ほきゃく)」4対、合わせて10本ありますが、タラバガニは1対が甲らのなかにかくれてしまっているので、脚が8本しかないように見えます。カニ料理のチェーン店の巨大なカニ看板も、よく見ると脚が10本のものと8本のものが。街で見かけたら、脚の数を数えてみては?
タラバガニの甘みとほくほくした歯ごたえのヒミツは、ほかのカニ類よりも多くふくまれる糖質とカルシウム。作家の幸田文(こうだあや)は、タラバガニについて書いたエッセイの中で、「うまいということとあまいということは、兄弟みたいにつながっているのだなあ」とその甘みに感じ入っています。このおいしさ人気を反映してか、年末年始のスーパーにはタラバガニが山積みになります。蒸したり、ゆでたり、新鮮なものなら焼きガニにしたり、そのままサシミにしたり、といろいろな食べ方が楽しめます。
タラバガニの「タラバ」は漢字では「鱈場」。「タラの漁場」でとれるカニということで、この名がつきました。日本人とタラバガニのつきあいは意外と浅いようで、明治時代、仕事をなまけていたタラ漁の漁船員が網を海底までおろしてしまい、あわてて引き上げたところかかっていたのがタラバガニだった、というのが、タラバガニ漁の始まりとか。「棚からぼたもち」ならぬ「タラからぼたもち」、といったところでしょうか。
サラダの具などでおなじみの「カニ風味かまぼこ」、略して「カニカマ」は、タラの一種、スケトウダラが原材料。カニは入っていなくても手軽にカニの食感を楽しめる、カニ好きにはうれしい商品です。カップラーメン同様、日本生まれの世界的ヒット商品であるこのカニカマ、近ごろでは本物のタラバにもひけをとらない「高級品」も登場しているといいますから、目かくしして本物と食べくらべしてみるのも面白いかも。