世界一有名なペンギンの知られざる秘密。
南極を紹介した写真や絵の多くに、
白と黒ではっきり色分けされたペンギンが登場する。
アデリーペンギンは、まさに南極を象徴する存在といっていい。
同時に世界で最も有名なペンギンでもあるが、
ほかのペンギンが体に斑紋(はんもん)や帯模様、
カラフルな冠羽などの特徴を持つのに対して、
単純な白と黒の色分けのみで、その容姿は実に地味である。
しかし、そんな彼らも「目」には装飾的な特徴を持っている。
一見すると白目の中にクリクリとした黒目が
あるようにしか見えないが、
実はこの白目に見える部分は
アイリングといわれる白い羽毛なのだ。
彼らが視線を動かしたり、興奮して目をむいたりしたときに、
羽毛の下から本物の白目が顔を出すのである。
- 冠羽
-
[かんむりばね、かんう]
頭の部分に生えた飾り羽根 - アイリング
-
目のまわりにふちどりのように生えた羽毛。ヒゲペンギンには黒いアイリングがある
タイムリミットは24時間。
アデリーペンギンの夏はあわただしく過ぎていく。
なぜなら、彼らは十月から二月という
南極の夏の期間に繁殖活動を行うからだ。
初夏を迎えるころにオスが営巣地に戻って巣をつくり、
メスの帰りを待つ。
しかし、待つのはせいぜい二十四時間程度。
多くのつがいは示し合わせたように落ち合い、
繁殖活動に入るが、メスの到着が間に合わないと
オスはさっさと別の相手を探し始めてしまう。
もう少し待ってあげても、と思うところだが、
これはオスが浮気性だからというわけではなく、
すべては子どものため。
とても短い南極の夏の間に交尾、産卵、抱卵、育雛、
ヒナの巣立ちまでを終わらせなければならず、
一日でも多くヒナのための時間を確保して、
確実に巣立たせたい…そんな親心からのものなのだ。
- 営巣地
- 巣をつくる場所。ペンギンは毎年決まった場所に巣をつくるものが多い
- 抱卵
-
卵を抱いて温めること
- 育雛
- [いくすう]ヒナを育てること
ペンギンを代表する存在となった理由。
「ペンギン=南極」が多くの人が持つイメージであり、
ペンギンといえばアデリーペンギンの姿を
思い浮かべる人が多いだろう。
日本に最初にやってきたのはフンボルトペンギンにもかかわらず、
アデリーペンギンが最もメジャーなペンギンとなった背景には、
日本の南極探検史がある。
1910~12年に南極探検を行った白瀬隊は、
わずか204トンの帆船で南極ロス海到達という快挙を果たし、
国民的英雄として日本に戻った。
彼らが持ち帰ったアデリーペンギンの写真や映像、
そして剥製(はくせい)が、南極探検の快挙とともに伝えられ、
ペンギンの存在が国民に広く知られることとなったのだ。
つまり「ペンギン=南極」というイメージも
このときにつくられたものなのである。
- 白瀬隊
- 日本で初めて南極探検に挑み、ロス海到達後、犬ぞりで南緯80度5分・西経156度37分の地点まで辿り着いた














