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【佐賀発】恋するマロン:パティシエも驚きの甘さはスウィーツ級!スター的かぼちゃ誕生

栗のような甘さと食感「恋するマロン」

16世紀にポルトガル人がカンボジア経由で日本に伝えたかぼちゃ。以来、数多くの品種が栽培されていますが、西洋かぼちゃの中でも特に味と食感が良いと、最近注目を集めているのが「恋するマロン」です。佐賀県伊万里市でこの品種を栽培している大川内農産では、完全無農薬栽培でおいしく育て上げる方法を確立しました。今やスター的かぼちゃとして、一流シェフや食の話題に敏感な消費者から引っ張りだこです。

恋するマロン 恋するマロンを使ったレシピはこちら


転機が重なりかぼちゃ農家へ

建設会社に勤めながら、米を栽培する兼業農家だった大川内さん。作業現場で事故に遭ったことをきっかけに、専業農家へと転向し、米と平行して何を栽培しようかと考えていた時に出会ったのがかぼちゃでした。かぼちゃを選んだのは、成長が早く、果物や他の野菜よりも日持ちするという理由から。秋口に収穫したかぼちゃを冬至に食べる習慣は、この特性があってこそです。温暖な伊万里市では二期作が可能で、3月下旬に作付けした「春かぼちゃ」は6月下旬から9月下旬まで、7月下旬から8月上旬に作付けした「冬至かぼちゃ」は11月から翌3月まで出荷ができ、手入れしただけ、応えてくれる素直さも選んだ理由の一つだったといいます。

恋するマロンに魅せられて

様々な品種を栽培するうちに、ホクホクした栗のような食感と上品な甘さが特長的な「恋するマロン」にめぐり合いました。その糖度は14.5%にも達し、桃やマンゴーに匹敵する甘さ。蒸すだけでスウィーツのような味わいが楽しめます。大川内さんは、この一種に絞り込み、より美味しく安全に栽培するための研究を始めました。まず行なったのが、農薬も化学肥料も一切使わない完全自然栽培。ところが思うように収穫できず、味ものってきません。佐賀県が認定している特別栽培の基準に見合うよう、最小限の化学肥料を取り入れつつ、自然の力に頼る方法を模索し、考えついたのが麦や飼料に使われるソルゴーの活用。畝の間でそれらを育てると、雑草の侵入を防げる上、刈ってその場に放置すればのちに有機肥料にもなります。保水効果もあって、ソルゴーは連作障害も防止。7年にもおよぶ試行錯誤の結果、この一石四鳥の働きによって完全無農薬栽培に成功し、味も格段に良くなって収穫量も順調に増えていきました。

佐賀県の特別栽培農産物に認定されていることを伝える立て看板。「佐賀県の名に傷をつけることはできないので、規定は絶対に守ります」と大川内さん。
佐賀県の特別栽培農産物に認定されていることを伝える立て看板。「佐賀県の名に傷をつけることはできないので、規定は絶対に守ります」と大川内さん。

春かぼちゃの畝の間で栽培する麦。生育時は雑草の侵入を防ぎ、ワラは有機肥料になる。冬至かぼちゃでは飼料などに使われるソルゴーを栽培。 春かぼちゃの畝の間で栽培する麦。生育時は雑草の侵入を防ぎ、ワラは有機肥料になる。冬至かぼちゃでは飼料などに使われるソルゴーを栽培。


親づる1本に1個の実が基本なので、脇芽はせっせと摘み取る。この作業を怠ると養分が分散して良いかぼちゃができない。愛犬チワワのベルちゃんも応援。
親づる1本に1個の実が基本なので、脇芽はせっせと摘み取る。この作業を怠ると養分が分散して良いかぼちゃができない。愛犬チワワのベルちゃんも応援。

消費者との交流イベント。現場を見て、土に触れながら栽培を体感することで、皆さん安心安全を確信して帰られるそう。
消費者との交流イベント。現場を見て、土に触れながら栽培を体感することで、皆さん安心安全を確信して帰られるそう。

京王プラザホテルの市川総料理長と大川内さん。
京王プラザホテルの市川総料理長と大川内さん。

食べれば分かってもらえる…その一心で

独自の栽培方法を見い出し、味に絶対の自信があっても、誰も評価してくれなければ自己満足どまり。「一度食べれば分かってもらえるはず」という一心で、食品卸売業者、大手スーパーやデパートなどに、恋するマロンを持ち込んで体当たりの営業をかけました。ところがどこも長年付き合っている契約農家があり、切り替えてもらうのは至難の業。肩を落とす日々が続く中、佐賀県が流通業者や飲食店向けに開いた特産品の商談会で、「こんなにおいしいかぼちゃは食べたことがない!」と一人のバイヤーが大絶賛したことから、一躍脚光を浴びることになったのです。佐賀県の首都圏営業本部が東京で大川内さんの恋するマロンをPRしはじめると、築地の大手青果卸売業者の目にも止まり、東京の名門ホテル総料理長との出会いへと発展していきました。

自信を確信に変えた総料理長の言葉

東京都庁前に佇む京王プラザホテルといえば、日本初の超高層ホテルとして有名です。その名門ホテルの市川総料理長が、恋するマロンに惚れ込んだという事実は大川内さんにとって大きな自信となりました。総料理長は伊万里の圃場(ほじょう)をすでに2回も訪問。大川内さんの真面目な人柄と栽培方法に触れ、ますます惚れ込むようになりました。今では直接取引され、ホテル内の日本料理店では煮物や天ぷらに、鉄板焼店ではお肉の名脇役をつとめるなど、ジャンルを問わず様々な調理法で大活躍。お客様からの評判も上々だそうです。「収穫が始まったら、真っ先に総料理長の元へ送って『おいしい』のひと言をいただいてから、皆様の元へと送り出してます」と大川内さん。自信を確信に変えてくれた総料理長への、感謝と信頼がひしひしと伝わってきます。


待っている人すべてにお届けしたい

「日本一おいしい」という評価が聞こえるようになると、今までの圃場では手狭になり、平成23年に梨の廃園を借りて作付け面積を拡張しました。かつて西日本最大の梨園だったこの場所は、丘陵地で水はけがよく、灌漑設備が整っていることから、かぼちゃ栽培には最適。現在春かぼちゃは80アール、冬至かぼちゃは40アールの圃場も使って計120アールで栽培し、年間200アール・約25トンを出荷しています。圃場の手入れから収穫まで、シルバー人材の方の手を少し借りるものの、7割の作業は大川内さん一人でこなすというから驚くばかり。ところが今の体制では出荷量が追いつかなくなってきているそうです。「楽しみに待っていてくださる方がいるんだから、人を増やしてでも作る量を増やさないとなぁ」と春かぼちゃが順調に育つ圃場の向かいで、更地になった圃場を見つめる大川内さん。来年からは人手を増やして全面使い、増産体制を図りたいと展望を語ってくれました。

何年経っても一年生

大川内農産ではプロの料理人、大手スーパーのバイヤーや、種苗業者の見学に加え、消費者を招いてのコミュニケーションづくりも積極的に実施しています。無農薬栽培を体感することで、皆さん根強いファンになるといいます。「顔を見せてしまった以上、不真面目なことはできないもんね。皆さんに来てもらうことが大きな励みにもなっているし」とその時の写真を嬉しそうに見せてくれました。取材中も灌漑設備を気にしたり、畝を歩く際に「あ、踏まないでよ」「そこ、つるが出てるから気をつけて」と常にかぼちゃの心配をする大川内さん。「丘の傾斜は膝にくるし、真夏の作業は大変だけれど、自分で選んだ仕事だから苦だとは思わないよ。農業は毎年が一年生。飽きないし、何よりかぼちゃがかわいいからね」とサラリ。そんな思いをしっかり受け止めたかのように、今年も春かぼちゃはスクスク成長しています。

開花した日を書き記して、積算温度の目安にする。これによって、だいたいの収穫時期が分かり、出荷のタイミングを取引先に伝えられるという。
開花した日を書き記して、積算温度の目安にする。これによって、だいたいの収穫時期が分かり、出荷のタイミングを取引先に伝えられるという。

実を結んだ恋するマロン。栽培の大敵は「手入れ不足」と語る大川内さんは、収穫時期を迎えるまで脇芽取りと、もろもろの作業のために毎日圃場をくまなく歩き回る。
実を結んだ恋するマロン。栽培の大敵は「手入れ不足」と語る大川内さんは、収穫時期を迎えるまで脇芽取りと、もろもろの作業のために毎日圃場をくまなく歩き回る。

春かぼちゃの向かいにある40アールの圃場。今は冬至かぼちゃでしか使用してないが、来年からは春かぼちゃも植えたいそうだ。
春かぼちゃの向かいにある40アールの圃場。今は冬至かぼちゃでしか使用してないが、来年からは春かぼちゃも植えたいそうだ。


※掲載の内容は、2014年5月現在のものです。