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青森発「葉とらずりんご」。甘〜いりんごは葉が命

本州最北の青森県弘前市に「日本一のりんごを作る」ため、革新的な取り組みをしている農園があります。常においしいりんごを届けたいという思いで生産と進歩を続けているゴールド農園の石岡昭夫さんにお話を伺いました。

葉とらずりんご

「より甘く、おいしいりんご作り」を追究し続けるゴールド農園の、収穫まで葉を取らない「葉とらずりんご」。日光をたくさん浴びた葉で作られるデンプンが果実に運ばれ蓄積されるので、糖度が高いりんごになります。りんごのおいしさの象徴でもある蜜が果実全体に入っていて、甘みと酸味が絶妙にブレンドされた果汁が口いっぱいに広がります。

葉とらずふじ
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きっかけは、消費者のなにげない一言

りんご栽培の過程で当たり前に行われていた「葉摘み」の作業。ゴールド農園でも“真っ赤な”りんごを作るために平成3年までこの作業を行っていました。ところが、その年農園見学に来た消費者の一人に「葉を摘むと、りんごはおいしくなるんですか?」と質問され、スタッフは答えに困ったそうです。なぜなら、葉摘みの作業は外見をよくするためだけに行う作業で、おいしくするための作業ではなかったからです。その事実を知った消費者に「ぜひ、葉摘みをしないりんごを食べてみたい」と懇願され、葉とらずりんごの栽培がスタートしました。

見た目よりおいしさを守る決意

葉で作られたデンプンがソルビトールという糖の一種に変わり、果実に運ばれ蓄積されることで、りんごは甘くなります。甘みを増やす役割をする葉を摘む行為はりんごの味をわざと落とすことになるのです。しかし、葉を摘まないと皮の一部に葉の影が残ってしまいます。「いくら味が良くても色ムラのあるりんごが消費者に受け入れられるだろうか…という不安があった」と石岡さんは当時を振り返ります。それでも、原野の開墾からりんご作りをスタートしたゴールド農園に脈々と受け継がれているフロンティア・スピリットが、この新しい挑戦へのドアを開けました。

“白い”りんごと格闘した3年間

栽培開始から1年後、初めての収穫期。実ったのは、「悲しくなるくらい“白い”りんごだった」と石岡さんは言います。何がいけなかったのか、スタッフ全員で悩んで、調査して、改善策を考えました。前年の失敗は次の年に確実に生かしていく。その繰り返しで迎えた4回目の秋、ついに赤く色づいたりんごが収穫できたのです。最初は農園スタッフだけで栽培していた葉とらずりんごですが、そのおいしさに魅了され「うちの畑でも作りたい」と申し出る農家が年々増加。栽培開始からちょうど20年を迎える今年、契約生産者はおよそ280人になりました。

「果汁がたっぷりなので、葉とらずりんごはずっしりと重いんですよ」と石岡さん。
「果汁がたっぷりなので、葉とらずりんごはずっしりと重いんですよ」と石岡さん。

約50年前、7人の若者たちが原野の開墾から始め設立したゴールド農園。創業以来変わらぬ理念は「日本一のりんごを作ること」。
約50年前、7人の若者たちが原野の開墾から始め設立したゴールド農園。創業以来変わらぬ理念は「日本一のりんごを作ること」。

ひとつひとつ手作業で収穫されたりんご。葉とらずりんごの“証”でもある葉っぱの影があるものも。
ひとつひとつ手作業で収穫されたりんご。葉とらずりんごの“証”でもある葉っぱの影があるものも。


朝晩と日中の気温差を広げるために敷くシート。寒暖差が大きい方がりんごの甘みが増す。
朝晩と日中の気温差を広げるために敷くシート。寒暖差が大きい方がりんごの甘みが増す。

選果工場内は冷蔵庫と同じ温度に保ち、りんごにストレスをかけない環境にしてある。
選果工場内は冷蔵庫と同じ温度に保ち、りんごにストレスをかけない環境にしてある。

コンピュータで糖度のランク別に選果。果実内部に欠点のあるものはレーン外にはじかれる。
コンピュータで糖度のランク別に選果。果実内部に欠点のあるものはレーン外にはじかれる。

4〜7月販売用のりんごはCA貯蔵庫で保管。酸素2%、室温0℃で“冬眠”状態にすることで長期間の鮮度保持が可能に。
4〜7月販売用のりんごはCA貯蔵庫で保管。酸素2%、室温0℃で“冬眠”状態にすることで長期間の鮮度保持が可能に。

「無農薬・無漂白」ということ葉の仕事を取らない栽培法

「りんごをおいしくするには葉の仕事を取っちゃいけない」と石岡さんは言います。たとえば、1本のりんごの木が「お母さん」とすると実は「子ども」です。葉は幹や枝と一緒に子どもたちに土からの養分を送り、霜や暑さから守ります。日光を浴びて光合成し、来年のりんごになる花のために養分を備蓄します。1個のりんごに十分な養分を蓄えるには健康な葉が20枚以上、来年の花のための養分を貯めるにも同量の葉が必要で、合計40〜50枚の葉が必要です。そんな“働き者”の葉を半分摘んでしまうと、残された葉は通常の2倍以上の仕事をしなければならなくなります。そして本来なら葉としての仕事を終え紅葉して散っていく時期になってもまだ青いまま仕事をし続けるので、翌年の開花時期が遅れるなどの支障をきたしてしまうそうです。

時には主治医になるリンゴ生産者

ゴールド農園の葉とらずりんごの木は自然のサイクルに逆らわず栽培されるので、収穫を終え冬が近づくと紅葉します。紅葉するのは葉が「仕事をまっとうした」印。りんごは落葉果樹なのでしかるべき時期に枯れ葉が落ちると有機質の土ができ、その土と蓄えられた養分の力で春には立派な花を咲かせます。その「自然のサイクル」を実現させるには生産者の知識と経験、365日絶え間ないりんご畑の手入れが不可欠。木は時に害虫や自然災害などで被害を受けます。そんな時、生産者が状況に合わせた“処方箋”を作成し適切な処置をしなければいけません。「お母さんが病気になったら子どもたちがかわいそうですから」と石岡さんは毎日畑の様子を見て回ります。

つながる、津軽のリンゴ農家の思い

120年以上もの歴史を持つ青森県のりんご栽培。革新的な品種、葉とらずりんごは生産者も増えて認知度も高くなってきたとはいえ、“りんごは真っ赤でなければ”という意識がまだ消費者の中で根強く残っているようです。ゴールド農園では自社の取り組みや商品について広く伝えるため、様々な活動を展開中。交流会に参加したり直接消費者とふれあえる販売会を行ったりして、生産者同士、消費者とのつながりを大切にしています。かつて葉とらずりんごが消費者の一言から誕生したように、お客さんの言葉を真摯に受け止め、それを「日本一おいしいりんご作り」のために生かしていく。「りんごに対する責任をしっかり持ち、消費者においしく食べていただくまでが自分たちの仕事なんです」と、石岡さん。津軽の特産品を“おいしく”、守り続けるその手と発想力はりんごの木の枝のようにしなやかでした。


※掲載の内容は、2012年11月現在のものです。