「イカ」は軟体(なんたい)動物頭足(とうそく)類の総称。頭から脚(足)がはえているから「頭足類」なわけですが、生物学的にはあれは脚ではなく腕なのだとか。というのも、あの10本のニョロニョロは歩くためではなく、おもにエサをつかまえるために使われるものだから。胴はイカメシでごはんをつめこむ部分、また胴と腕のあいだにあるのが頭です。ハムレットならずとも思わず頭をかかえたくなる、じつにへんてこな生き物ですね。
日本でいちばん漁獲量の多いイカはスルメイカ。そのスルメイカを細く切り、しょうが醤油などでツルツルいただくのが函館(はこだて)名物「イカそうめん」。海に出た漁師があわただしい漁のあいまにさっと食べられるようにと考えだされた料理とか。同じスルメイカでつくる漁師料理では「イカの沖漬け」も有名。釣りたてのイカを生きたまま醤油の入った樽に漬けこむという豪快な料理です。
イカを干して作った「スルメ」の表面についている白い粉。イカを乾燥させることでイカのエキス分がうき上がって表面に出てきたものですが、あの白い粉がつかれた時に飲む「栄養ドリンク」の主成分と同じだということをご存じですか?その成分は「タウリン」というアミノ酸の一種で、植物をのぞくほとんどの生物に存在しています。人間の体にも体重の0.1%の量が含まれていて、生命活動を保つために欠かせない成分です。イカ以外にもカキやはまぐり、あさり、タコなどに多く含まれています。
「セピア色の思い出」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょうが、では「セピア色」ってどんな色?と問われて答えられる人は少ないかもしれません。じつはこれ、イカスミからつくられた絵の具の色。具体的には黒みがかった茶色です。少し色あせた感じの古いモノクロ写真は「セピア色」の代名詞。時には古いアルバムを開き、ロマンティックな気分で「セピア色」の思い出にひたるのもいいですが、じつはそれ、「イカスミ色」なのです。